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◆ 茨城県診療センターにて ② ◆

「茨城県診療センターにて」




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



人工呼吸器を、見たことがありますか?

のどに穴を開け、チューブを気管奥に差し込む。
外からコンピュータ制御で酸素を入れる。
痰がつまると、モニターで察知したナースが来て、
痰を吸い取ってくれる。

意識不明、自力呼吸がおぼつかない患者に施される緊急措置です。

気管に管が入っているため、声が出ません。

昏睡状態のまま、ベッドにはり付けとなって。
一ヶ月あまりで意識は戻りましたが、意思表示が出来ません。

右半身はマヒし、腕も足も蒼白。
左目は開いたまま、瞳孔はどんよりと力なし。

真夜中の睡眠中、呼吸器を外そうとするため、
両手は拘束バンドで固定されています。

その姿に、妻 笙子さんは胸がつまりました。

しかしどうしようもありません。
ただただ体力回復を待つ以外なし。

病院は「打つべき手はすべて打った。」と説明しました。

しかし、
梗塞を起こし、壊れた組織や神経は、
元には戻らない
と。

では、退院後の社会復帰はだめなのか?


寒い時期の入院です。
4月に入り、榮治さんが肺炎を起こし、熱発していた……
と病院から連絡が入りました。

笙子さんは、病院のソーシャルワーカーを通し、
医師に抗議しました。

なぜ、事後連絡なのか
と。
院内での感染症は、処置に不手際があったからではないかと。

どうやら、病院側の判断で、夜間に人工呼吸器を外してみた。
それが原因のようだと推測がつきました。

小さなトラブルでしたが、これが担当医師との
コミュニケーションのパイプが生まれるきっかけとなりました。


この間、笙子さんは知人の女性心理学者から、
俊爺著『AWGは魔術か、医術か?』を紹介され一読、
「この医療器具で(夫は)本復するのではないか」
と直感したといいます。

しかし、磁力線がコンピュータ・システムに作用するため、
呼吸器を装着している間は照射できません。

医師にAWGのことを言い、
「人工呼吸器が外れれば、照射してやりたいのです。」
と、訴えました。
おそるおそるの訴えでした。


ふつう、
医師は院内への治療器具や薬品の
持ち込みを嫌がります。


自分たちの医療技術、措置判断に誇りを持っているからです。
外部から持ち込まれた器具で、容態が悪化した場合を警戒します。

けんもほろろに断られるだろうと、笙子さんは覚悟しました。

しかし、センターの医師は偉かった。
患者の妻の訴えに、じっと耳を傾け、
「病院としては、なすべき措置はやっています。」
ときっぱり。

口調は断固としていましたが、
「お断りします」の言葉はなかった。


「それなら退院してもらいます。」の強圧的もの言いもなかった。
暗黙の了解、大英断です。

笙子さんは医師に感謝しました。


ナース詰め所の記録では、
榮治さんが初めて食べ物を口にしたのは、4月26日。
1日1個のゼリー。

ミキシングしたおかゆを口にしたのは、5月7日。
このころから少しずつ体力が回復しはじめました。


倒れて5ヶ月の月日が経過しました。
「昼間だけ、人工呼吸器を外します。」と連絡が入り、
照射開始は5月下旬と決まり、俊爺の出番となったのです。

初日から丸一週間の期限で、密着取材が始まりました。

初めて対面した榮治さんは、頬の肉がそげ、
動かぬ右足の筋肉がガックリ落ちていました。

身長171センチ、体重56キロ。
ふだんからスリムな体型が、さらにやせっぽちに。

顔面は蒼白。
声が出ないまま、さかんに唇を動かしますが、
何を言っているのか、聴取不能。
大きな目が力なく宙をさまよっています。


動く左手の仕草で「ボードを取ってくれ」。
枕元の小型黒板をかざすと、左手で文字を書こうとしますが、
字だか線だか不明のミミズがのたくるばかり。

10分かかってようやく分かったのは
「妻はどこにいますか」

これが俊爺への第一声でした。

「いま、病院の中のコインランドリーに、洗濯をしに行っていますよ。」
と俊爺。

再び不明のミミズがのたくり、とつおいつ、すがめつ、
分かったのは「いつ帰りますか」

「何かして欲しいことはありますか?」と大声で聞くと
「×○◇……」。

ミミズ登場。

15分後、やっと分かったのは「羊羹が食べたい」でした。

これが通じ合ったときの、俊爺のいや嬉しかったこと。
榮治さんも嬉しいらしく、照れくさそうな笑みが浮かんでいました。

大の甘党だったのです。

人間、わかり合うには時間がかかる……俊爺の実感です。


笙子さんは、2つのコード番号を選びました。
1つは身体のアルカリ性、酸性のバランスを調節するコードです。
もう1つは免疫向上のコードです。

身体の倦怠感を軽くしてくれます。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ( … 続く ) ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



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プロフィール

俊成 正樹

Author:俊成 正樹
1936年生まれ。大阪市出身。
中央官庁(現・国土交通省)勤務を経て、社会派ジャーナリストとして独立。松本清張、森村誠一など有名作家との共同作業に参画、取材・調査に活躍。
1981年より「水」問題に取り組み、元日本陸軍の保有していた防疫給水技術調査のためアメリカ、イギリス、中国、ロシアなど各国を取材。各地の水資源問題に精通。
著書に『日本から水がなくなる日』(2009年)、『学校では教えない商売・お金・運開き』(2009年)、『水道管の叫び』(共著、2010年、以上中経出版刊)ほか多数。

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